庭にお願い

とにかく、実際に「現物」を見てみなければ分からない、というものがある。明日、ついに来日するジャド・フェアもそうだけれど、本当にレコードに記されているものというのは、あくまでもその音楽を知る上での「手引き書」とか「記憶をあぶり出すもの」だったりとか、そんな風にしか思えないものが幾つかある。そして、倉地久美夫というシンガーでありソングライターであり、ギタリストであり詩人であり、絵描きであり、倉地課長でもある人も、まさにそういう「現物」に圧倒される人だ……と書いていて、ふと、倉地さんのレコードで圧倒されないか、といえば、ガツーンとやられるわけで。俺、いったい何を書いてるんだろうか(笑)。とにかく、今話題になっている倉地さんのドキュメンタリー映画の予告編をば……え、まだ再生回数65回? 何、それ! いや、たぶんYoutube経由以外から見ることの方が多いんだろうなぁ。なかなか熱い感じのトレーラーですね、こりゃ。あ、田口さん、出た!

倉地さんを知ったのは、京浜兄弟社(岸野雄一さんを核にして、その周辺のアーティストたちが自然発生的に集ったもの)のオムニバスカセット『誓いむなしく』でのアジャクレヨンズだったような気がするけれど、それはもう20年以上前のことか。当時京都に住んでいて、そのころ同世代の関西のニューウェイヴ(とそれ以降)といったらミンカパノピカやビスケットホリック、紅花梨とかくらいだったにも関わらず、東京は本当にスゲーナーって思って憧れておりました。もちろんティポグラフィカやEXPOの洗練された感じにうわーってなりつつ、やっぱり気になったのは、もすけさんとアジャクレヨンズでした。当時いなかったんですよね、こういう特別な(少し奇なる感覚の)歌い手さんが。ただ、後で分かったんだけれど、このカセットが出た頃は、既に倉地さんは九州に戻られていたんですよね。

その後、mapのツアーで九州にライヴで行く際に、やっぱりどうしても倉地さんに会いたいなぁってのがあって、九州を手伝ってくれていたChicago ClubのRyuKくんが仲良しということもあって、ことあるごとに出ていただいて。あぁ、やっぱり凄いなぁって。声を出す瞬間とか、ギターを弾く瞬間のちょっと前、まだ音が出ていないんだけれど、その気合や気迫みたいなのが、こっちにグァーンと伝わってくる。居合抜きってこういうのかしらんと思ったりもするんだけれど。で、実際に音が出たら出たでもちろん凄い。グニャリと何かが曲がる。うゎあって。グワーンでぐにゃり。柔と剛。

そんな倉地さんの絵がまたすごく好きで。きなこたけからずっと前に出たアルバム『夏をひとつ』の普通の風景なんだけれど、なぜか非現実のような仕上がりの絵が気になっていて。あれがなんで非現実感があるのか、未だによく分からないんだけれど……。で、かえる目のファーストを作る際に、「ジャケットをお願いできませんか?」と駄目もとで頼んでみた。なんかかえる目の世界とあの風景が地続きのような気がしていて。それでできたのが『主観』のジャケット(実は原画がなぎ食堂にずっと飾ってあることをご存知ですか!)。そして、その後第二弾とも言える『惑星』の絵が届いたときには、本当に驚いた。というか、本当に体が震えた。俺、とんでもない人に絵を頼んでいたんだなぁって。安田謙一さんからトクマルシューゴくんまで、この絵に関しては賞賛を惜しまないのも当然の話。本当に有難うございました!

そんな倉地さんの映画ができるって話を聞いたのは2年ほど前のこと。こういう話って結局進まないんだよなぁって思っていたんだけれど(ゴメンナサイ!)、監督・冨永昌敬さんとプロデューサーでもある須川善行さんの尽力もあり、めでたく完成。実は俺もまだ見ていないんですが、何とかして今回の上映の間に映画館に観に行こうと思っております。正直言えば、昨今の音楽ドキュメンタリー映画ブームってあんまり興味がないんですが、これはちょっと別かなぁって思ったり。あと『クラチ課長の凡な日常の非凡』っていうドキュメンタリーが観たいんだよなぁ。コレよさそうです。

2011年3月5日(土)~3月11日(金)
池袋 シネマ・ロ

劇場で前売券をお買い求めの方には、倉地久美夫画の特製絵ハガキプレゼント! 上映期間中はトーク、ミニライブ、短編併映などのイベントを日替わりで実施します!

<日替わりイベント>
3/5(土)冨永昌敬監督×菊地成孔×須川善行によるトークショー
3/6(日)併映『ビクーニャ』(02/冨永昌敬/35分)
3/7(月)併映『私が幸せでいるという事』(02/深川栄洋/32分)
3/8(火)併映『夜をまきもどせ』(06/岸野雄一/40分)
3/9(水)併映『Mirthful Crime』(85/倉光純/18分)
3/10(木)併映『クラチ課長の凡な日常の非凡』(09/RKB毎日放送/12分)
3/11(金)倉地久美夫ミニライブ

あと、本日3月4日(金)の夜に、須川さんと爆音映画祭を主宰しているboidの樋口泰人さんがこの映画について語るUst放送があるそうな。樋口さんは映画評論家として、さまざまな映画にまつわることのインディ・プロデューサーとして知られていますが、実は今から20年ほど前には中央線近辺で中古レコ屋をやっていたオッチャン。だから、氏の関わる映画は、音楽が大事な部分を成していたりするわけです。また、map Oとは、以前2年ほどガッツりと一緒に組んで仕事をしており、個人的に尊敬する数少ない大人でございます。ちょっとこのUstは面白そうなので、忘れないように先にこちらに貼り込んでおこう、と。

【ust放送は終わりましたので、削除いたします】

倉地さんに関しては、まだまだ書きたいことがたくさんあるなぁ。ただ、ひとつ。今回の映画で田口さんをはじめ多くの方から【変】と言われることに対して、わりといつも「私は変じゃないですよ〜」と言われますが、むちゃくちゃ多くの意味を含めて、やっぱり倉地さん【変】だと思います。ハイ。