小池喬『お風呂の栓』

見るからに、才能をギラツカせてる人がいる。オーラをばりばりと出して、もう光がビカーって光ってる。きっとオーラが見えるとか言ってる人が見れば凄いんだろうなぁ。目を覆うばかりの光、だって鈍感な俺らですら、そう思っちゃうんだもの。でも、正直、周りにはそういう人って本当に少ない。いないわけじゃないけれど、やっぱり少ない。ただ、そういうのじゃないんだけれど、時折「ハッ!」とその凄みにビビる時がある。で、二度見してみたら、やっぱりそれまでと何も変わりない素の光景。でも、ぼんやりと見ていると、チカチカとその才能を青白く光らせていたりする、そんな人もときどきいる。

シラオカのヴォーカリストでありギタリストでもある小池喬(こいけたかし)くんもそんな青白い光を時々チカっ、チカっと光らせる男。一瞬「あれ? 今は見間違い?」って思うんだけれど、彼の創りだす音楽を聴く毎に、その光が明瞭になってくる。もちろんシラオカでもそんな光は感じたけれど、このソロ・アルバムである『お風呂の栓』を聴いたとき、はっきりと分かった。この人は何かをゼロから創り出せるタイプの人なんだ、と。

ソロ・アルバム『お風呂の栓』……なんだよ、そのタイトル(笑)。ひどいなぁ。まったくイメージが沸かないぞ。自分の中から溜まった何かを一気に抜くってことの比喩なのかしらん? それにしても地味な作品、でも地味だからこそ、何度も聴くたびにジワジワじわじわと染み入ってくる。いや、もしかしてすごいぞ、もしかしなくても。すごい、チカっ、チカっと光ってる。

基本、ギターのスリーフィンガーピッキング多重録音や、シンプルなピアノ演奏をバックに歌が奏でられている本作。 スタジオで録ったのではなく、どこかコタツにでも座りながら録ったような手触りがなんとも「近さ」を感じさせる音楽。でも、ベタベタな生活感がある感じではなく、どこか一枚膜が貼られたような、不思議な浮遊感がここには存在している。なんだこの薄い皮膜は? あと、朴訥に見えて饒舌、おだやかにみせかけて、少し、乱暴。シラオカとは違ってドラムがないせいか、歌声もまったく張ることなく、口先で呟き気味に歌っているのも、どこか怪しげな匂いを感じさせる要因なのかもしれない。また、少し皮肉っぽい言葉が飛び出すのも素敵だ。以前からmyspaceにアップされて話題になっていた名曲M4「名古屋とばし」。「名古屋とばし」とは、こないだも書いた「大阪と東京で何かやってるんだけれど、名古屋をスルーしちゃうこと」の意だけれど、名古屋人がいつも感じていることと、自身の(何かしらからの)疎外感を重ね合わせたのが巧い。

「西へ東へ 名古屋とばし 窓辺の城は どこかさみしい
町のオレンジが ガラスにはりつく 
西へ東へ 名古屋とばし 連絡網は 僕をとばし
あなたがいるとこ 少し遠いから
西へ東へ 名古屋とばし」

実際、この短い歌詞(引用ですべて)ゆえに「あなた」が誰なのかは明確にはされていないけれど、「あなた」は自分の目の前を無視して通り過ぎる、という切なさを「名古屋とばし」という若干コミカルな新語で形容しているのが興味深い。

ただ、ここで1点、聞き違えているのかもしれないが、「町のオレンジが ガラスにはりつく」の意がまったく読めない。本CDには歌詞カードが添付されていないため聴き取り違いかもしれないが、短いこの歌詞中にこの一節の意を持たないのはやや不可思議でもある。しかし、M3の「おでことおでこ」にも同様の言葉が現れている。

「眠りから覚めたとき 窓の外オレンジ
あの子がならした今の 夢の中のことでした」

どうやら、小池くんの見る「窓」の外には、なぜか「オレンジ」がある模様。なんだ、これは? 何かの思い出なのか? ただ、あれだもんなぁ、東京から大阪に抜けるんだったら、そこにあるのはオレンジではなくみかん畑だよなぁ。これは、一度訊いてみた方がよさそう。

【追記】ということで、小池くん本人に訊いてみました。

そういうことかー。そういうことなのかー。窓越しに見える風景がいつもオレンジって。そういう体験っていうのはとても個人的な体験だから説明されないとまったく理解できないものだけれど、そういう実体験の中から産み落とされるものって、妙にリアルに響いたりするよなぁ。面白いなぁ。

あと、よくよく聴けば、ちょっとしたラヴソングではないか、と思わせるフレーズが幾つも存在しているのが面白い。これは、シラオカとはまったく違う世界観とも言える。

「一番に思い出す人 一番に食べたいもの 
おでことおでこをあわす 温度」
【おでことおでこ】

「アホみたいだね
お風呂場で 思い出す あの子との約束」
【自由帳】 

ただ、それらの彼女との出来事が、「思い出す」ものであるのが切ない。あぁ、切ないぞ、この作品、どうにもこうにも。そして、本アルバムにおける切なさの極北は、M6の「どうもありがとう」。

「おとしもの どうもありがとう 君の名前を 聞いておけばよかった
今日の映画 ぜんぜん泣けないよ 僕の眼鏡が 大きすぎてよかった」

 素直に感情を言葉にできない、そんな不器用なタイプの男のちょっとした出来事。それが訥々とした歌声で綴られていく。まぁ、実は「どうもありがとう」というタイトルを聞いて一番最初に勝手に思い出したのは、井上順の「お世話になりました」だったんだけれど……あぁ、それだったら全然切なくない。

そんな小品が並ぶこのアルバムの最後を飾るのが「白岡インフェルノ」 、もちろんシラオカと関わりがあるんだろうけれど、この曲の歌詞に関しては、まったくよく分からない(すいませーん!)。ただ、最後のこの曲だけ、自身のピアノに加え、The Momentsの後川佳介のよる遠くで奏でられる泣きのミュート・トランペット・ソロにより、若干大作っぽい作品に仕上がっている。たしか、シラオカって地名だったんだよなぁ。あの埼玉県の白岡なんだろうか? それとも別の場所? もしかして妄想の場所?

ソロのシンガー・ソングライター作品とは言え、少し独特のギター・ワークと適切なピアノ・サウンド、ここぞという部分でのハーモニーと、シンプルでありながらサウンド的にも決して飽きさせることのないこの作品。彼の青白い光は、あなたの心を締め付け、そして少しだけ温めてくれることだろう。

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  • 7月29日出演の小池喬さんはシラオカというバンドをやっています。白岡町とは関係ありません。だって名古屋の人ですもの。なぎ食堂/comparenotesの小田さんの評http://t.co/7ibbdtRLそして小池さんの音源聴けます。http://t.co/LRpfy4G2

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  • またゆっくりお話ししますが、関係あるんです!!w"@cafecouwa: 7月29日出演の小池喬さんはシラオカというバンドをやっています。白岡町とは関係ありません。だって名古屋の人ですもの。なぎ食堂/comparenotesの小田さんの評http://t.co/Is7pyOXJ

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  • RT @hosomari_: 小池喬さんに関しては、まだ数回しか見てない私がなにか語るよりも…ということで、mapの小田さんの書かれた文章がとても興味深かったので、紹介ページに載せさせて頂きました。http://t.co/uJ4Ty9bc @mapupnews