驚くべき、底ヂカラ

本日、ホライズン山下宅配便『りぼん』発売いたしました。当webでも絶賛(なのか?)発売いたしました。買ってください。聴いてください。特典は、ないけれど(笑)。本当はあるんだけれど、なぜか買ってくれた人ではない方に渡そうとしている馬鹿な私達。そう、少しでも気にしてくれる貴方のために、ちょっとだけ販促物を作っております。その詳細はまた追って。

でもって、本日、発売を記念してとりあえず何かやろうと、当方の店「なぎ食堂」にて、発売記念小宴会(これ、俺はショウエンカイと読むつもりで書いてたんですが、コエンカイと思ってる人が多い様子。コシバイとかコアキナイとかコアキシャルとかコエンザイムみたいな感じですな)を催しました。 なぎ食堂のお弁当付きで1,000円。まぁ、実質弁当代。タダに近いようなもの。とはいえ、ちゃんと台本も作った小芝居を入れつつ、楽しいお話が続いて(司会を急に頼んだブリッジ新実くん、有難う。本当に素晴らしい司会っぷりでした!)、一応、ちゃんとした演奏も入れようということで、4曲、生演奏を行ないました。

実は、当初、せっかく発売するんだったら、発売日のその日、何か自分たちが動くってことがやりたい、ってことで、発売10日ほど前に急遽決まった今回のイベント。それゆえに、ほとんど喋りだけで、1曲だけ演奏するってことでどうだろうか、と話は進んで行きました。まぁ、普通の食堂だし、機材もないし、ライヴをやるっていっても弾き語り……普段はライヴではあんまししないにも関わらず、名曲の誉も高き「雨の日」みたいな、あんな感じでさらっと1曲、2曲、あればいいかな、と。

そう、正直、店主でありレーベルオーナーでもある自分もまったく期待してなかったんです。 というか、なんで気付いてなかったんだろう。この人たちがこんなに本気だったとは。いや、どうだったのかな(笑)。

ホライズンについては、いろいろ書きたいこととか思いとか、そういうのはいろいろあります。いろいろあって説明すればするほどドツボにハマるっちゅうか、言葉を費やすほどに、本質から離れていくようなそんな気さえするバンドです。ただ、今日の4曲の演奏は、実は彼らの音楽的な核にかなり触れたような、そんな気がしています。でも、正直、ここまでとは思っていなかった。ここまでとんでもない力を蓄えていたとは、思ってなかったのが事実です。ゴメンナサイ。誰に謝ってるのかは分からないけれど。

今回のアルバム『りぼん』を聴けば、キャッチーなシングル「期待」とはちょっと違う作風だと感じておられると思います。地味、というのが一番適切かもしれないけれど、とにかく少し奇妙だけれど「期待」のカタルシスはここにはまったくない。いわゆるバンドサウンドを補完する形で、木管(基本オーボエ)と倉林くんのチェロが彩りを添えている、そういう音楽的なバリエーションが魅力的だなぁ、と。こりゃ、通人もグッとくるかもね、なぁんてことも思っていた。そして、この緻密に作り上げられた世界は、多重録音とかミックスの妙とか、そういう技術によって支えられていると思っていた。

でも、そんなヤワなことじゃなかったんですよ。

今回のアルバムの中で最も異質で、一番とっつきにくい曲ともいえる「イカレコンマタヒラ」という曲があります。歌詞の内容もよくわからないし、大げさなオペラ風のヴォーカル・スタイル、 正直、こういう音が彼らがポピュラリティを持ちにくい理由ではないかと思う人も少なくないでしょう。ただ、ですね。この得体の知れない、怪しい、つかみどころのない鰻のようなどこかヌメッとした、そのくせ大げさなアレンジが詰め込まれたこの曲が、今日の演奏では鳥肌がビンビンに立って、それが曲が終わっても収まらない、というか今でも思い出すとグッと来る、そんな音楽になっていたんです。

今日の演奏は、バンセくんは小さなギター・アンプ、倉林くんのチェロ、一尊さんはDIを使って店のスピーカーから出す形(後に説明するけれど、コレがよかったのかもしれない)、黒岡氏はマイクも使わず生声、そしてゲストにアルバムにも参加しているオーボエ町田大庸さん(素晴らしい!)という編成。ま、倉林くんがドラムを叩かずチェロに、それにオーボエが加わったようなもの、と思うでしょう。でも出た音は、これまでのホライズンとはまったく異なるものだった。

普段のホライズンは、ロックバンドという基本形の中で、どれだけ飛ぶことができるか、 が肝だと思う。そして、その飛びの距離は、黒岡氏の調子とかテンションとか、降りてくるものとか、偶然とか、そういった類のものであって、なかなかそれは日によって異なるものだし、伝わらないことも外すことも多々あったと思う。それを3人のメンバーがじっと見守りながら、光る瞬間を見逃さずに爆発する、ということ。その爆発の要素として、「期待」のダンスっていうのはとても効果的だし、ひとつのカタルシスを計算できる要素だったと思う(あ、そんなネタバレをしてもいいんだろうか……いや、大丈夫!)。

でも、今日の演奏は、バンセ・アレンジの丁寧な室内楽を軸にして、バンド全体が大きなうねりを作っていき、そこに黒岡氏の熱が重なりあうという形。その中で特に面白かったのは、一尊さんのベース。なぎ食堂には2系統のまったく性質の異なるスピーカーが天井に配置されているんだけれど、そこから響きだす低音が小さなスペース全体を包み込んで、箱自体が鳴る。で、その上にチェロとオーボエがさえずり合い、バンセくんが全体を指揮するかのようにギターを薄く載せていく、というものだった。これが、本当に凄かった。CDで聴くあえて作り物っぽい室内楽とは全然違う、とても有機的で大きなうねりを持った音。普段だったら「よぉ分からん」で済ませられるかもしれない黒岡氏の言葉も、「ラ〜ブ、メン、ド〜コテ〜」っていうよおわからんコーラスも、全部が人肌で暖かく、強く、ちょっとグッと来るものに変わっていた。

音楽っていうのは、意味で聴くものじゃないって分かってるつもりだったけれど、今日、改めてそう思った。そして、こんなロック・バンドは、知る限り今日本にはいないなぁと思った。

彼らを古くから知っていて忌憚なき意見を述べるMC.sirafuが、今回のアルバムでのもうひとつの異質曲「あかいあかい」を10秒聴いただけで、大笑いしながら「いやぁ、最高!」と一瞬で名品だと判断したのは、たぶん彼らのこういう「異質」と思われている部分の本質的な美しさ、凄みを既に理解していたからだと思う。そういう音楽的な「凄み」をきっとホライズンはこの先、小出しかもしれないけれど、見せていくんだろうなぁ、と。ただ、「ちょっと変で、でも巧いバンド」とか「キャッチーな言葉遣いとファニーな音世界」とかで近づくと、やっぱり痛い目に合うかもしれないなぁとつくづく思ったりも。

今日、バンセくんがQ&Aでちょっと口に出したヤクルトの伏兵・宮本慎也が気付くと2000本安打を達成しちゃったように、ホライズン山下宅配便は、地道に、本当に誰も期待していない場所で約10年間熟成し続けたものが、今、ついにとんでもない形で変様を始めている。次は、あとこの編成でチューバが入ったものが聴きたい。企画しよう。

そして、期待は確信へ。まだまだ、こんなもんじゃない。笑ってられるのはいまのうちだよ。

上記は一応アルバム・プロモーション用のPV。15分もの間、どうしようもない無駄が並べられている。好むか好まざるかは自由ですが、コレ、最後まで見てくれるかしらん。あ、最後まで見ても無駄っぷりは変わらないと思うけれど……。